刀人―巡りめく戦乱の中で―
「愛しておりました……吉良」
もちろん、今でもこの想いは変わらない。過去にもできないとも分かっている。
けれども、私は曲りなりにも須江長の娘。姫として、残された者としてやらなければいけない使命が残されている。それがこんなにも辛い現実だと、こうして皆居なくなって初めて知ることになるとは世は皮肉そのものである。
彼を失くし、そして父を失くした感情を無くせなかった不甲斐ない娘が最後の父との約束を果たす為、この場所に想いも一緒に置いて行く覚悟で決意を誓う。
消えることのない、灯火を。
それが私にできるせめてもの弔いであるのだから。
――それでも、
「っ………」
大切な人を忘れようとする事がこんなにも辛いことだとは知らなかった。
初めて想いを知り、失うことへの虚無感。
胸が張り裂けそうで、声が拉がれていく。