部屋替屋
「埃があるね。」
目の前に現れた埃を、手を振り回して散らそうとする。だが上手くいかず鼻に入り、咽(むせ)てしまった。
じいちゃん達は一週間くらいしか経っていないって言ってたのに、結構ギリギリだったんじゃないかな。
「誰もいない、ね。」
返事を求めない言葉を言い、住吉は静かにほっとし、再度歌を始める。先程とは違うものだが、大抵の者はその違いになど気づかないだろう。
歌が終わり、道場は静かになった。そして、何かが無くなった感覚がまとわり付いた。