部屋替屋
「お疲れ様。」
腰まで届く黒髪をふわりとさせながら、玄関口で笑顔で迎えてくれた女性。住吉と同じで、こちらも実年齢より幼く見える。
ちよは食いつく様に、けれど相手に驚かれないよう冷静に返事をした。
「ただいま、居鈴。」
「ちよさんの家じゃないじゃん。」
住吉をまるっきり無視してちよはさっと靴を脱ぐと、綺麗に揃えて居鈴の元へと駆け寄った。いつものこと。
「姉ちゃん、じいちゃんいる?」
「さっき出掛けちゃったんだけど、宅間さんならいるわ。」
居鈴は住吉に背を向けると、先程言った主を呼んだ。部屋の奥の方から返事をする声が聞こえ、ゆっくりとした動きで三人のいる所へ出てきた。