部屋替屋
宅間は住吉達が来る前から置いてある湯呑みを手に取り、一口啜(すす)ると話を始めた。
「却人(きゃくじん)はいなかったでしょう。」
「…いなかったけど、仮部屋の時は埃が無かったのに、真部屋に戻ったら埃が舞ってた。」
「仮部屋の埃が残っていたんでしょう、もう消えていますよ。」
「オレの歌が駄目だったからじゃないの?」
不安そうな言葉に、不甲斐無い顔で宅間に質問する。きつい答えなど戻ってこないだろうが、若しもの時のため、ショックを和らげるための防衛策だった。
「違いますよ、見えてない場所にあったんです。」
「…そうかな。あと、生徒希望者って勘違いされた。」
「そうですね、まだ成人には見えないかもしれません。ネクタイもまだ窮屈でしょうがないでしょう。」