溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~
「…尚志…お前も苦労してたんだな。
単に明るい兄ちゃんだと思ってたよ」

俺の冷やかしにも、ふっと笑い返すだけで。

「悩んでる自分すら認めたくなかったからな…長かった音楽人生から離れた事実を認めたくないから、悩む事すら拒否してたし」

聞けば聞くほどに、尚志の葛藤の強さがわかってくる。
過去の自分を捨てて新しい自分を受け入れるのは…勇気がいるから。

俺だって、耳が聞こえなくなった時…。
透子と離れ離れになった時…。

その都度自分の過去と未来に折り合いをつけて生きてきた。

自分の大切にしたいものや欲しいものに気付きながら手放しながら…。

それでも、俺は透子と再会できると。
根拠のない自信を持ちながら進路を決めてきた。
ホテルで働く事を選んだのも、あらゆる人が出入りする場所だからってだけ。
興味があったのも確かだけど、少しでも透子に巡り会う可能性の高い職業を選んだ。

「濠が前に言ってただろ?彼女が側で笑ってる以上に求めるものはないって」

「あぁ…言ったな…」

酔っ払った時に、そんな
照れくさい事も言ってるな…確かに。

ははっと笑いながら、固い表情の雪美を気にすると何かを考え込むように視線はどこにも定まってない…。

「雪美?」

小さな声で呼びかけてもぼんやりとしたままでゆっくりと俺に顔を向けた。

「尚志の音楽が…私には真田くんだったの…」

「…俺?」
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