溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~
『手術は成功です』

そう医者から言われた時には、泣いて喜ぶ透子の両親から離れたところで俺も泣いた。

あの優しい笑顔にまた会える。
暖かい体温を感じる事ができる。

そして、諦めかけていた透子の声を聞く事ができる…。

周り全てに感謝したいくらいに体中が浮足立ち、自分のものじゃないようにふわふわ漂う幸福感。

俺の両親も、聴力が戻っただけでなく、どこか内面が変わった俺に対して喜んでいた。

入院生活を経て、人を想い、愛する心に目覚めた俺を、誇りに思うと言ってたな。

…けれど、そんな楽観的な考えは長続きしなかった。

透子の体が回復すれば、二人で穏やかに愛情を交わし合う恋人同士になれると思っていたのに。

幸せな未来が待っているって信じていたのに。

透子には、心臓以外の病気が見つかって…。
あっという間に専門病院に転院。

術後の経過が良好だった事もあって、手術後3日目の朝には救急車で運ばれていった。

家族でもなんでもない俺がその事を知ったのは、既に病室が綺麗に片付けられた後で、転院先も教えてもらえず連絡先も知らず。

最悪なのは、手術後一度も面会できなかった事。
術後良好とはいえ集中治療室に入っていた透子に会えるわけもなく。

俺を診てもらっている医者に頼んで、様子だけを教えてもらっていただけで。

…まだ高校生だった俺は結局透子を探し出せないままに乱れた大学生活を終えて。

あの日再会できるまでに5年がかかった。

再会できなければ…

そう考えると不安で潰れそうになる。
透子と一緒に生きる人生を手にするために…。

俺は無色に近い5年を過ごしたんだ。

もう二度と見失ったりしない。
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