溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~
「なんで…?明日帰って来るんじゃ…」
部屋に入って、ゆっくりと私に向かってくる濠から目が離せない。
明日帰って来るはずなのにどうして…?
驚きが、私の涙を止めてしまったけれど、反対に鼓動は激しく跳ねて周りの音ですら聞こえないし…濠しか見えない。
いつもの強気な表情のまま、部屋にいるみんなに軽く会釈しながら近づく濠。
スーツ姿の長身は、この部屋の誰よりも素敵に見える。
「悪かったな。突然」
昴の前に来た濠は、軽く昴の肩を叩いた。
「いえ、いいですよ。
俺達もいつも真田さんには無理言ってるし…。
おまけに透子さんは俺達の憧れの先輩だし…。
これくらいの事ならいつでも」
見た目の整った二人の男
は悪戯めいた視線を交わして笑ってる。
仕事とはいえ、昴と彩香ちゃんの結婚式を担当してる濠は、二人と親しくてもおかしくない。
人生の慶事を整える作業を一緒に進めているんだから…。
接する機会も距離を縮める機会も多いんだから…。
こうして笑いあっていても不思議じゃないけど。
二人が私に向ける何か企んでるらしい笑顔には、それだけじゃない親しさが見える。
動けずに濠だけを見ている私の前に来ると
「目真っ赤。泣きすぎだ。…ま、この顔もかわいいけどな」
「な…っ…こんな所で…」
ほとんど触れそうになる二人の額にドキドキして後ずさる私の両手は濠に掴まれて。
身動きが取れないまま。
「濠…近いし…」
照れながら俯く私の言葉なんて聞いてないように笑ってる。
「…透子」
「何…?」
「透子」
「…?どうしたの」
優しく私の名前を呼ぶ声は、二人きりでいる時とは違うけれど。
それでも久しぶりに聞く愛しい声は、それだけで嬉しい。
「透子」
「…何…?」
みんなに見られていて恥ずかしいけど…。
それでも濠に飢えていたこの一週間の寂しさが上回って。
見つめ返さずにはいられない。
「透子」
相変わらず何度もそう呼ぶ濠は、私の腕を掴む力を強くしたかと思うと、ニヤリと笑って。
「ただいま」
…そう言った濠の唇は、次の瞬間には私の唇を覆っていた…。