溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~
「透子が15の時から俺のだから。
会社に入ってからの浅い付き合いじゃないから、誰にも渡すわけないし」

敢えてなのかどうかわからないけれど、単調な口調がやけに重い。
同時に引き寄せられた私はすっぽりと濠の腕の中に収まってしまった。

それほど強くない拘束のせいか、濠の胸に腕をついて顔を上げると、口元を引き締めて冬李くんを凝視している顔…。

「濠…?」

囁くくらいの声をかけると、その瞬間私を抱く腕に力が入った。

「…俺が隣にいるってのに、なんで透子を口説くんだ?
冗談にしてはマジな声で…。
どう言ったって透子は俺のだからな」

「あ…あの…濠…。
冬李もそんなにマジなわけじゃないと…」

何だか濠の機嫌は最悪に悪い…。
慌てて口をはさんだ私だけど。

「いや、マジですよ。
口説いて俺を選んでくれるならいくらでもマジで口説きますから」

挑戦的に言ってる冬李くんは軽くため息…。
周りも、私達の様子に気づいたのかざわざわとしていた部屋の温度が少し下がったよう。

「奪える隙があったらいくらでもマジで口説くしもっと早く近づいてましたよ。
入社してからずっと好きだったし…」

「…え…冬李くん…」

「多分、俺の気持ちに近い想いを持ってる男。
かなりいると思うけど。
透子さんには口説ける隙がなかったから…。
みんな見てるだけで」

私には理解できない言葉ばかりが冬李くんの口から出てきて、驚いて何も言えなくなる…。

私を口説く…?
隙がない…?
冬李くん以外にも想いを寄せてくれる人がいる…?

濠の腕に包まれながら、そんな疑問ばかりが私の中に占めて。
戸惑いと、濠が誤解しないかと…不安になる。

そっと濠の顔を見ると私を見つめる濠の瞳が揺れているのがわかる。

『心配するな』

ほんの少し口元を上げながら、そう目で伝えてくれてるようで…。
いつも私を見てくれる温かさを見て。

ふふっ…。
二人にだけわかるくらいに笑ってみせた。




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