溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~
濠は相変わらず機嫌が良いとは言えない。
冬李くんの言葉や態度に敏感に反応して眉を寄せてる。
私に対してはかなり強気な姿勢で臨む事が多い今までを思い出した。
濠以外の男性と親しくするなんて許すわけないし、手元に置いて私の様子を逐一見ていないと気がすまない濠。

その独占欲からくる安定感に慣れてしまった私。
濠の愛情に囲われて、些細な嫉妬に不安感を消して。

眉を寄せた濠の表情が、そんな今までの当たり前の日常の幸せを思い出させてくれる。

濠の私への愛情は、ある意味束縛に近いものがあるけど、その束縛によってもたらされる煩わしさよりも喜びの方が多い。

だから…側にいたい。
愛情に基づいた束縛を感じて。

ゆっくりと手を伸ばして、濠の眉間に触れた。

「しわになってる…」

「…誰のせいだよ」

「…私」

くすっと笑う私に小さく息を吐いた濠は、いつもの甘い視線を私に向けて。
小さな声で

「覚えてろよ」

…甘い時間を示唆された気がして、一気に私の脈拍数は右上がり。
色気のある声に顔も熱くなる。

「…それだけ隙がなかったら…口説けないでしょ…」

しばらく見つめ合ってた
私達に、隠す事ない不快な声。

「ここ半年、透子さんがやたらコンクールに集中したり仕事に時間割いたりしてる噂聞いてたから、俺が奪える隙もあるかと思ってたのに。

…全くチャンスないし…」

「えっと…冬李くん?
本気で…?」

あっけらかんと乾いた調子の冬李に、私や濠はもちろん部屋中のみんなが視線を向けている。
穏やかさと冷静さが第一印象にくる冬李が、こんなに気持ちを吐露するなんて珍しいし、彼らしくないから…。

「…とにかく、俺は透子さんが好きなんです。
多分、俺のもんになる事はないってわかってますけど、しばらくは存分にひきずります」

まるで。

『お幸せに』

と言ってくれてるように。そんな声音が少し切なくて痛い。
冬李くんにしてみたら抱えてくれていた私への想いを濠に託す時間だったとしても。
そして、新しい時間へ踏み出す為の大切な言葉だったとしても。

やっぱり。
切なくて痛い想いでも。

こんな私への気持ちは嬉しい。
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