溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~
「玄太に冬李…で、吉井新って何?
俺がいない間に透子を口説いたって写真が出たらしいぞ。
次々とやっかいな男が登場だな」
電話を切った濠は、低い声で私に聞いてきた。
まっすぐな視線は私をぐっと固まらせるのに十分で、ごまかしもでたらめも無理だとわかる。
私の腕を掴んで引き寄せると膝の上にのせて、首筋に額をうずめる濠は、
小さくため息をついた。
「…で、何で二人で飲みに行ったんだ?」
くぐもってはいるけれど、確実に機嫌の悪さがわかる声。
「えっと…雪美さんは…新聞見たの?
まだ私も見てないし…っていうか忘れてたのに」
「忘れてたって…知ってるたのか?」
「うん…。昨日相模さんや部長から教えられて…怒られたから」
「…へえ…。ざまあみろ。俺以外の男と飲みに行くから。もっと怒られてこい」
くくって笑う濠の声はまだ硬いけど、ほんの少し和らいだ空気にホッとする。
「どの写真が載ったのかな…」
昨日届いた何枚もの写真を思い出して…こんな時に不謹慎だけど、かわいく写ってる写真だったらいいなあとか思ってしまう。
「…カウンターで見つめ合いながら笑ってる写真だって雪美が言ってた」
「あ…あの写真かな…」
半泣きになって父さんのファイルを見たりしてる時の写真…。
見つめ合いながらっていうのは何だかずれてるけど、何も知らない第三者が見たら見つめ合ってるって思われるのも仕方ないか…。
雪美さんもそう見えて誤解して濠に電話してきたんだろうし。
「で、なんで吉井新なんだ?大賞とったからみでか?」
「あ…うん。
記者発表で会って、父さんの事をよく知ってたから…いろいろ話してもらってたんだけど」
「ふーん。わざわざ二人でか?」
「まぁ…。他人に聞かせたい話でもないし…。
驚く事ばっかりだったし…」
「…吉井新って透子の父親の事知ってるのか?」
「うん。父さんに憧れて今いる事務所に入ったって。私の事も多少聞いてたみたいで…」
私の心もとない言葉を理解しようと気持ちの葛藤をしているのがわかる濠の表情に申し訳なさを感じる。
「…ごめんなさい。二人で飲みに行って新聞に出ちゃって…いい気分じゃないよね」
俯く私に、小さくため息をつくと
「…これからも覚悟しなきゃな」