溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~
土曜日の役所は、特別に婚姻届を受け付けるようで、普段の混み合う窓口を想像していた私には意外だった。
当番で出勤しているような人に提出した婚姻届は程なく受理されて、受付票をもらった。
「真田透子」
口にしてみると、やっぱり恥ずかしい。
車に戻って一息ついた私には、さっきこの車を降りた時と名字が変わった事に実感がわかない。
「…ようやく、ちゃんと俺のもんになったな」
運転席の濠の言葉は妙に重くて切実な響きが感じられて…。
真っすぐ前を見ながら運転する濠を見ると、一瞬私に視線を合わせてくれた。
ホッとしたような様子に私は首をかしげてしまう
。
最近ずっと感じている違和感はまだ私の中にくすぶっている。
結婚に対する積極的な気持ちを感じた事なんてなかったのに、濠の態度や言葉は、まさに結婚を意識したものだとしか思えなくて。
その変化が、たとえ私を喜ばせる変化だとしても、結婚を求められる存在だと教えられるとしても、やっぱり急に変わった濠の様子と焦りが私にはある意味不安を煽る。
何がきっかけでそんな変化が生まれたのか、察する事ができなかったのは、この半年間を自分の事にしか気持ちを向けられなかった自分のせいなのかと悲観的にもなってしまうし…。
うれしく幸せなはずの結婚なのに…。
何だか心からの実感と喜びがわいてこなくて。
…何があったの?
そう問うことすら怖くてできない。
歯がゆい…。
「これで…透子にはもう俺しかいないな」
「…前からずっとそうだよ、濠しかいないよ…」
「まぁ…そうなんだけど。俺が認める認めないに関わらず、透子が持つ選択肢を全て排除したんだよな」
淡々とつぶやく口調には、思いがけない感慨も感じられて、更に私にはわからない事ばかり。
「やっとだ…やっと透子を側に置いておける…」
相変わらず、一人想いにふける濠の隣で、私はただ何も言えずにいた。
そして車はゆっくりと、ホテルへと向かっていた…。
結婚式の準備の為に。