溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~


ホテルに着いてすぐに訪ねたのはブライダルサロン。
式の申し込みや打ち合わせをするカップル達が何組もいて慌ただしい雰囲気。
やっぱり人気のホテルだけあって予約が取りにくいっていうのも頷ける。

隣の濠に不安な気持ちのまま視線を投げると、励ますように笑いながら私の腕を取って、サロンの奥へと向かった。
途中、係の人何人かが濠に気づいて会釈する度に濠も挨拶していて。

私はどんな顔をしていいのかわからないまま、曖昧に笑って。

着いた衣装室で濠が真っ先に挨拶したのは、受付で若い係の女の子達に何か指示していた女性。
50代くらいの温和な笑顔が綺麗な人。

「佐賀さん、今日は忙しいのに無理言ってすみません」

佐賀さん…そう呼ばれた女性の前で軽く頭を下げる濠の横で、私も一緒に挨拶した。

「いいのよ。真田くんのお願いをきかない訳にはいかないものね。
私の娘の時にも無理言ったし…。

で、こちらの綺麗なお嬢さんが婚約者の方?」

優しく向けられた視線が、緊張していた私の気持ちをほんの少しほぐしてくれる。

「いえ…婚約者ではなくて。
今朝入籍したので…妻の透子です」

佐賀さんに、私を紹介する濠の声はどことなく嬉しそうに聞こえる…。

妻…。

初めてそう呼ばれて私の鼓動はとくんと跳ねて、かぁっと体も熱くなっていく。
慌てるように頭を下げて。

「あ…透子です。はじめまして」

とにかく早口になってしまうのを抑えられないままに呟いた。

くすりと笑った佐賀さんは、目を細めて。

「ふふ…。かわいいわね。新聞で見るよりずっとかわいい。

真田くんが今まで隠していたのもわかるわ」

え…。

おっとりとした言葉だけど、新聞という単語に敏感に反応してしまった。
一瞬びくっとした私の様子に気づいたのか、そっと腰に回された濠の腕が唯一の逃げ場のように感じる。

「そうでしょ。新聞なんかじゃこいつの可愛さは出せないんで。
結婚式の衣装は佐賀さんが存分にかわいく仕立ててやって下さい」

「よっぽど嬉しいのね。昨日突然電話もらってからいろいろ用意してあるから…とりあえず試着しながら考えましょうね」

私に向かって話す佐賀さんに、曖昧に表情を作りながら不安ばかりが溢れてくる。

そう、不安…。
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