溺愛結婚!?～7つの甘いレッスン～
ようやく理解したのか…。
それまで震えていた空気が穏やかになった。
きっと、予想外の言葉だったんだろう…理解した意味を受け入れるのに苦労しているかのように顔を歪めている透子…。

まぁ、俺が今まで抱えてきた想いのほとんどは、透子に悟られないようにしていたからな。
飄々と笑って透子の側にいるだけで…いや、側にいて透子を俺に縛りつけて愛情を注ぎ込む俺しか知らなかったはずだからな。

戸籍という身動きのとれない約束に縛り付けたくて仕方ない長い年月に、俺が苦しんでいた事も気づいてなかったはず。

…再会してからずっと、それだけを。

透子との結婚を望んでいた事も、予想を超えた事で。

今透子は、過去の俺と今の俺とを結び付けるだけで精一杯。
瞳の奥に逡巡するあらゆる感情には、どれだけの混乱が生まれているのかが表れている。

「ずっと、透子と結婚したかったんだ」

想いをこめて吐き出した。

「原因不明の聴力の低下に苦しめられる未来が待ってるかもしれない俺には夢でしかなかったから、隠してた。
それでも、透子を手放すなんてできない自分に嫌気がさす事も日常的だし。
狂いそうだった」

はは…っと渇いた笑い。
ぐっと握りしめた両手を膝の上に置いて。
振り返ればつらかった過去を消化する。

本当に…透子を嫁さんしたかった。
いくら抱いても愛しても、完全に俺のものにできない自分がもどかしかった。

透子が結婚の事を口にしない事をいいことに、ただ側に縛り付けていた俺の身勝手な長い歳月を、変える事ができるなら…。

透子のもっと近くに、俺の存在を刻み込むようにあらゆる干渉をしてきた過去。

たった一つ。

結婚できなかった過去を
振り返ると心は痛む。

「…がっかりしたか？

透子に強気な俺を見せながら、逃がさないようにずっと透子を縛ってたのは…結婚できない不安を隠そうとしてたからだ。

…は…情けないだろ？」

透子の体を少し離すと、冷たい空気が間にできた気がして震える。
透子とのわずかな距離にさえ不安がうまれる事を改めて確認して…否応なしに自分の弱さが襲ってくる。

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