溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~
「濠がそんな風に思ってるなんて気がつかなかった…ごめんね…」

小さく囁く透子。
じっと俺を見ている表情には普段と変わらない温かさ。

「濠は結婚するつもりないのかな…って思ってたんだ。そんな様子なかったし…何も言わなかったから」

「…したかったんだ。
再会して…すぐにでも俺の籍に入れたかった」

「…そっか…。わかんなかった。隠すの上手すぎ。本当…わかんなかった」

「…悪かった。透子にとって…俺との結婚が幸せなのか迷ってた…」

「ふうん…」

拗ねているような低い声が、まるで俺を責めるようで…。

やっぱり、俺との将来に不安を感じるのか…?
たとえ森下先生から呪縛を解くきっかけを与えられたとしても、それは俺の中で単純にそう解釈しただけのもんで、透子にしてみれば俺の将来が確約されたわけのもんでもないんだろうか。

俺の聴力に障害が生じる可能性に気づいた透子には、今の俺の心境は受け入れ難く。

拒みたいに近いもん…?

微かに歪んだ口元からは、俺がホッとできる感情は何も読み取れなくて。
相変わらず拗ねたように目を細める透子。

「悪かった…勝手に結婚すすめて。
とっくに言っておかなきゃなんない事だったよな。
俺の耳が完全によくなったっていう保証はないって…言ってから結婚するべきだったな」

既に入籍した後で言っても仕方ない言葉を吐いてしまう俺らしくない俺に嫌気がさすけれど、透子が悲しい想いをしているならば払拭したい。

もしも俺との結婚を後悔しているならば…その後悔ごと包んで…手放すなんてしない。

たとえ透子からマイナスの感情を向けられたとしても、もう離れるつもりはない。

やっと二人同じ名前になったんだ…諦めるなんてしない。

「でも、もう遅いから。透子の人生全てを手放さない」

ゆっくりと言い聞かせる俺に、一瞬ピクリと眉を寄せた透子は、小さくため息をついた。

「勝手だよ…濠は…」


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