溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~
「だから目が覚めていく時に、透子の心臓の音が聞こえてくるとホッとする」

小さく笑ってみる。
それでも長い間隠していた黒い想いは声にも表れていて、いつも強気に出ている俺の様子とは全く違うと…自分じゃないみたいだな。

透子がどう受け止めているのかは、固まった表情から読み取ることはできない。
ただ、じっと俺の言葉に意識を集中させたまま。

今まで一緒に迎えた朝は数え切れない。
その数え切れない朝を、悲しい気持ちで迎えていたんだろうか…。
俺が安心感をもらうのと引き換えに、透子は何かをを誤解して不安でたまらなかったんだろうか。

「目が覚めるのと一緒に透子の心臓の音が聞こえたらそれだけで安心した。
ちゃんと耳が聞こえる、透子の側にいて透子を幸せにできるって思えるんだ」

お互いにそらす事なく絡ませあう視線に、少し照れくささを隠しながら。
まだ透子がどう誤解しているのか核心には迫れていないけれど、とにかくずれてるお互いの想いを今修正しないとだめだ、とそればかりを考えていた。

「耳が聞こえなくなったら、透子を幸せにできないかもなって不安だったけど、手放すなんて考えられなかったから。

やたら縛り付けてたよな。
…不安だったんだ。
透子を俺の戸籍に入れてしまいたいのにできない自分にイライラもしたし」

「そんなの…そんな勝手なの…わかんなかったよ」

相変わらず固まった表情のままで、透子は絞り出すような声で俺を責める。
揺れる瞳からは、まだ出るんだと感心するように涙が流れていて、今の状況にしてみれば相応しくないほどにおかしくなる。

「…聞いてる?」

「あ、ああ聞いてる、透子が怒ってるのもわかってる。
俺の今までの事、怒ってるんだろ?

早く結婚したかったか?」

「そんな簡単な気持ちじゃないっ」

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