溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~
見つめ合うなんて初めてじゃないのに、妙に照れくさい。
そんな気持ちをごまかすように部屋を見回してみる。

濠個人に与えられたらしい部屋は、茶色で統一された内装が落ち着いていて、来客の応対も可能な設備。
机の上に積まれた書類の多さが濠の忙しさも表している。

ぼんやりと、私が知らない濠の日常を想像しながら…思うのは。

私が踏み込めない濠の世界には、私よりも濠の側にいる存在があるという事。
私との再会より以前から近くにいて濠の生活を見ていた存在の影を、この部屋から感じてしまう。

机の上の決裁書類には雪美さんの名前も記入されていて、貼られた付箋には

『忙しい中悪いけど
至急よろしく
落ち着いたらまた飲みに行こう』

と書かれている。

見るつもりもなかったのに目にした途端にじっと読んでしまった。

また…飲みに。

何度か飲みに行ったりもしたんだろうとは思うし仕方ないのは同じ社会人としては…納得したい。

それでも、濠に対する雪美さんの想いを知っている私には、単純に気持ちを消化するのは難しい。

雪美さんと過ごす時間は、私にはわからない濠の顔が日常となる時間。
私には知る事のない濠の毎日を、側で共に送る雪美さんが羨ましくて。
少し胸が痛い。

ちゃんと籍を入れて、結婚式の準備もしているし…何より濠からは、強い気持ちを与えられているのに。

どうしたって嫉妬に違いないもどかしさには抗えない。

…本当…私も欲張りだな。

これ以上の濠を欲しがったらきっと、呆れられてしまう。
仕事中の濠があるように、私にも同じような時間があるから…雪美さんの想いにも納得して。

濠にとって私が側にいない時間を当たり前に過ごす日常をしっかり受け止めなきゃ…。

寂しいけど…。

雪美さんが濠の近くにいるのにも慣れなきゃ…。

小さく息を吐いて、雪美さんの名前の書かれた書類から目をそらした。

だからといって気持ちは相変わらずざわざわと落ち着かない。

「…もう一つだけ、透子を甘やかせてやろうか」

「…え?」

視線をあげると、ニヤリと笑う濠…。

「かなり嬉しいと思うぞ」

「…?」

私は何の事かわからないまま手招きする濠の側に近づいた。
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