溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~
「あ…、すみません…私…」

何を言っていいのかわからないまま…慌ててしまう。
私は雪美さんの存在を知っているけれど雪美さんにしてみたら、わけのわからない女…。
驚くのも不思議じゃない。

「…紹介しとく」

濠が私の側に来て雪美さんの前に私を立たせた。
肩に置かれた濠の手が力強くて…ホッとする。

「嫁さんの透子。今朝入籍したんだ」

淡々と話す濠の声音に、聞き慣れない響きを感じる。
強く言い聞かせるように話す様子に、違和感すら感じてしまう。
背後にいる濠の表情が気になって振り返ると、優しい視線を私に向けていた。
一瞬…頷いて、心配するな…とでも言いたいかのように口元を上げた。

「…結婚式の打ち合わせで連れて来たんだ。
今衣裳決めてきたとこ」

「え…結婚…したんだ…そっか…」

「あぁ。…結婚式までは色々と世話になるけど、頼むわ」

言葉に詰まって、かたい表情のまま立ち尽くす雪美さん。
よっぽど濠と私の結婚がショックだったんだろう…。
ぐっと握りしめた手…きつく結ばれた唇に、濠への想いをうかがう事ができる。
誰が見ても綺麗な顔だけでなく、意思の強そうな雰囲気に包まれている容姿は迫力があって、向かい合っているだけで圧倒されそうになる…。
気持ちの真っすぐさが、濠への強い想いが…隠される事もなく部屋に漂う。
本当に、濠の事が好きなんだな…。
私が濠に再会できる前から…濠の側にいて想いを寄せていたはずの人。
ただひたすらに濠の事を好きだったのに報われる
ことのなかった現実。

…揺れる瞳の奥の切なさを、私が思いやるのは。

…きっと私の傲慢な想いなんだと感じる…。

濠と愛し合える私の間違った優しさ…というよりも勘違い…。

雪美さんの気持ちは雪美さんにしかわからないしどう折り合いをつけていくのかも雪美さんにしか決められない。

たとえ、濠への想いに今すぐ終止符をうてなくて、あきらめられないのなら、それを私も受け入れなきゃいけないし…。
決して望んでいる展開ではないけど、人の気持ちはどうこうできないから…。

…やっぱり…まだ濠へ気持ちは残ってるんだろうな…。

苦しげに小さくため息をついた雪美さん…。
そんな様子も綺麗に見える。
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