溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~
夕食の片付けを終えて、明日授賞式で着る服をクローゼットから出してみたり挨拶で話す内容を確認したりしていると、お風呂あがりの濠が寝室に入ってきた。

「綺麗な色のスーツだな」

壁にかけたサーモンピンクのスーツは、膝丈のワンピースにボレロを重ねるデザイン。

『授賞式で着て欲しいな。…小山内さんばかりが透子ちゃんのお父さんだって騒がれてるのも悔しいし』

ははっと照れ臭そうに笑いながら手渡されたスーツは有二パパからのプレゼント。

美容師という職業のせいかセンスのいい有二パパは、髪型はもちろん洋服に関しても私に似合うのは何かを熟知している。
学生時代は有二パパと一緒に買い物に出かけていろいろとアドバイスしてもらったりもした。
仕事を始めてからはなかなか時間がとれなくて、
久しぶりに有二パパが選んでくれた服。

授賞式で着て欲しいと、用意してくれた。
母さんは少し不安げにしていたけれど、私が喜んで受け取るとホッとしたように笑ってた。

正直、父さんの事を知った時から無意識に作っていた母さんとの距離に切なさを感じながらも自分ではどうしようもなかった。
父さんと母さんが離婚する時、赤ちゃんだった私を半ば無理矢理引き取って、その後会わせようとしなかった母さん。
その事実を知って、ショックを受けずにはいられなかった。

この半年、弥恵さんから聞いた父さんの人生や私への愛情を知ったり吉井さんから教えてもらった父さんの仕事ぶり…。

もっと早く知りたかったし父さんに近づきたかった…悔しかった。
私に会いたがってたという過去を小山内竜臣という天才建築家に重ね合わせながら、私の悔しさと寂しさは次第に母さんへの距離につながっていった。

母さんが私と父さんを引き離さなければ、父さんだってコンクールに参加する事もなく穏やかに生きられたかもしれないのに…。
弥恵さんと暮らしながらも私とも過ごす事だってできたかもしれない。

そんな『かもしれない』
をひきずり過ぎるほどひきずりながら母さんに対しては複雑な感情を持て余すようになって、距離ができてしまった。

仕方ないのに…。

誰も悪くないのに。

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