溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~
そして、雪崩のように加速度的な勢いで濠との関係は距離を広げていってしまって…。

コンクールに作品を出品すると決めたのは、父親への罪悪感に似た気持ちと一人よがりな想いだと今ならわかるけど、当時の私はそれが満点の行動だとしか考えられなかった。
濠との距離を悩む暇も持てないくらいに集中して頑張った結果。
コンクールで大賞をとった事によって父親を…小山内竜臣を詳しく知る事ができたから、結果的には良い方に転がったし、濠とも結婚して…幸せになれた。

それでも、やっぱり。

絶えず心の深い部分にひっそりと腰をおろしている黒い気持ちは、まさしく父親への申し訳なさ。
生きている間に会いたかった。
笑顔や優しい声や怒った背中も見たかったし感じたかった。
私がこの人から遺伝子を引き継いだっていう事実を目の当たりにして驚いてみたかった。

そして何より…。

人生を変える事になっても、私の心臓の手術が成功するように心をくだいてくれた事に、感謝したかった。

お礼を言いたかった…。

そんな機会をもてないままに、亡くなった父に、私はどう気持ちの折り合いをつけていいのかわからなかった。

だから…吉井さんや仁科さん…相模さんもだけど。
父親との過去の思い出を持っている人と関わる事が、何だか切ないって感じる。
本当なら、父の一番近くで。
一番の思い出を一緒に作っていたはずの私なのに私には父と共有してきた宝物は何一つない。

吉井さんから聞かされた父の実績や人柄を振り返る度に嫉妬に似たもどかしさを味わうのを避ける事もできないし、そんな自分は一体どうしたいのかと自問自答。

コンクールで大賞をとって以来のマスコミの記事には父と私の縁薄い関係が載っていて、それも心に痛みばかりを生じさせる。
会いたかったな…。
何度も何度もそう思うばかり。

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