溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~
そして、親子二代での受賞は大きな話題になっている。

過去二人目。

仁科透さんに続く二代目の受賞に関しては、仁科さんと私の名前も大きく取り上げられて戸惑ってしまう。

『透子』と『透』。

同じ漢字を使っている名前に関しては確実に偶然なのに、その偶然さえも運命かのように騒がれた。

意識したくはないのに、そんな状況のせいで嫌でも仁科さんを意識してしまう。

私と違って父との思い出をたくさん持っているに違いない仁科さんを、まっすぐに…まっさらな気持ちで見る事すらできないのに…。

仁科さんにしてみれば迷惑な私の感情なんだろうけれど、濠と気持ちが通じ合って穏やかに過ごしている新婚生活の中で。

家族となった私と濠との空気をまとっていると、家族になりそこねた私と父親との叶わなかった過去が悔やまれて仕方ない。
どんな想いや経緯で母さんと離婚したのかはわからないけれど、私のために人生を変えるなんて事をしてくれた父親を恨むなんて感情はないし、逆に申し訳なくて仕方ない。
もし一度でも会えたなら、ありがとうって言いたくて仕方ない。

私を愛してくれてありがとうって。

…だからかな。
何度も父と会って言葉を交わして…多分食事も一緒にしただろうし誕生日や記念日を一緒に祝ったはずの仁科さん…その背中を見ると、気持ちは黒くて重い石のようになっていく…。

ぐるぐると後ろ向きな考えを断ち切れないままに仁科さんの背中を見ながら連れて行かれたのは。

「あ…この部屋…」

「そう。透子ちゃんと真田さんが披露宴をする部屋」

扉を開けてくれている仁科さんの横をすり抜けて入った先に広がるのは、大きな窓から差し込む明るい光。
部屋中を柔らかな雰囲気に整えている。
濠が案内してくれた時と変わらず、部屋中が光に溢れていて眩しいくらい。

どうしてここに連れて来られたのかわからなくて戸惑いながらも、この部屋が持つ明るさに気持ちは和んでしまう。
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