溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~



弥恵さんを迎えに行って、現場に着いた時。

夕日に照らされた現場は何故か温かくて柔らかい面持ち。
足場が整然と作る規則性は、順調に作業が進んでいる象徴のようで心が和む。
小さな頃から建設現場が大好きで、スケッチをしながら完成した後の建物を想像したりする子供らしくない子供だった私。

小山内竜臣の遺伝子がそうさせていたんだと、弥恵さんが教えてくれた。

実の父親…小山内竜臣も子供時代から現場が大好きで、作業をしている職人さん達に可愛がられていたらしい。

「ちゃんと、私がファイルを作り続けるからね」

父が愛用していた一眼レフを器用に操作しながら、ファインダーを覗く真剣な声で。

何度も聞こえるシャッターをきる音。

私の作品ファイルを作り続けていた父が亡くなって、弥恵さんが代わりに作ってくれている。
吉井さんから預かった父手作りのファイルも弥恵さんが持っているのがいいと思えたから返した。

私が持っていてもいいと言ってくれたけれど、父の傍らで出来上がる過程も見続けていた弥恵さんが持つ方がふさわしく思える。

そして、父の気持ちをつなげる意味をこめて、弥恵さんがファイル作りを再開してくれた。
私の仕事をファイルしていく事は、私の近くで私を見守ってくれるという事で、私と濠が始めた家族としての歴史の輪の中に弥恵さんも加わってくれるという事。

父が大切にしていた弥恵さんを、私が代わりに。

これからは大切にしていきたい。

露骨にそんな想いを弥恵さんにぶつけると、きっと恐縮して距離を作られてしまいそうだから…。

父の遺してくれたファイルを口実に、お互いの様子を絶えず触れる関係にもっていけたのは嬉しい。
今では感じる事のできない父を、大好きな弥恵さんの向こう側に感じる事ができる…。

そんな関係を…喜んでくれてるよね。

父さん。
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