溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~
「…俺は、ずるいよな」

「え?」

耳元に落ちる濠の苦しげな声。
どうしてそんな重い吐息になってしまうのか、想像はしてたけど…まさかこんなにもすぐに…。

赤ちゃんの事を聞いて、濠が私を心配する気持ちを予想しなかったわけじゃない。
心臓の事は私も気になりながらお医者さんの話を聞いて、多少注意する事はあるけど出産を無事に迎えられると…。

「俺は、透子がいないとだめなんだ。

そりゃ子供は欲しい。
俺の子供を透子が産んでくれるなんて…幸せ以外の感情はないんだ…でもだめなんだ」

「…濠…だめじゃないよ」

「だめだ。透子を失う可能性があるなら…子供は諦めてもいい」

力強い腕が私を抱きしめる。
離せば二度と会えないような切迫した抱き方に息ができない。
濠の胸に納まる事に慣れている私だけど、こんなにがむしゃらに抱えこむ濠の必死さには慣れてなくて。
私が考えてるよりも濠に大切にされてると実感してしまう。

「透子…透子…」

「濠が思ってるより私も私の心臓も強いんだから。お医者さんだって大丈夫だって言ってくれてるから」

「…」

「そりゃ、双子ちゃんだから気をつけて過ごさなきゃいけない事もあるし…帝王切開かもだけど」

「帝王切開…?」

「そ。双子ちゃんの場合は多いらしいよ。
あ…柚さんだって帝王切開だったし、心配する事じゃないから」

ね、と濠を見ると。

落ち着くどころか更に顔色は悪くて、沈んだ感情を呼び戻す術を思い出せないくらいにひきつっていた。

こんなに固まってる濠にどう言葉をかけていいのかわからない。

何か思いつめた目を私に向けると、濠は感情のこもらない声で呟いた。

「柚さんと一緒って…それって相当のリスクがあるって事じゃないのか?」

あぁ…。
何か言い方を間違えたのかな…。
柚さんの出産を軽々しく口にしちゃいけないのに。

「あのね…」

不安に覆われている濠の周りの空気を拭うように…。

ちゃんとわかってもらえるか…。

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