溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~
高校一年の時。
入院中の私が初めて濠に会ったのは、風邪をこじらせて中耳炎になってしまって連れて来られた院内の耳鼻科。

聴力検査の後の芳しくない結果に落ち込み、何もかもに苛立ちをぶつけたくて仕方ない彼を耳鼻科の女医さんが必死でなだめていた。

『甘えないでっ』

きつい言葉をかける女医さんも半泣きで、濠にちゃんと聞こえてないのに何度も何度も。

『まだ治る可能性はあるのよっ』

そんな言葉が伝わる事はなく、濠はキッと睨んで診察室を出ていった。

入口で呆然と立って様子を見ていた私にも鋭い視線を向けて出ていく濠の背中は少し震えていて、泣いてるように見えた。

整った顔で睨まれて、その瞬間はびくっと身体がひけてしまったけれど、長身で引き締まった身体に目を奪われて。

睨まれた怖さよりも、
とくん…と跳ねた鼓動に驚いてしまった。

思わず凝視してしまった濠の後ろ姿が診察室から消えた後も、鼓動が作るときめく音が私を包んでぼんやりとしていた…。

そんな私には、そのあとの耳鼻科の診察の記憶はなくて、きっと上の空だったと思う。

ただ覚えているのは、診察の最後に

『中耳炎は完治したから、来週の心臓の手術もきっと大丈夫』

そう言われて。

濠に向かって浮つきそうになっていた心が一気に緊張感に包まれたって事…。



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