海の果てに-君は海賊-
昨日同様、少し歩けば小さな村が見えてくる。
近づけば近づくほど高鳴る心臓。
そして嫌な汗が全身の毛穴から溢れ出ているような感覚。
そんななか、足取りが重くなっとしまうのは仕方ない。
ヨ「…大丈夫だ」
あたしの異変にいち早く気づいたヨクが頭を掻きながら言う。寝癖がほわっと浮いていて、格好ついてないのがなんともヨクらしい。
リ「ヨク、格好ついてないよ」
ヨ「なッ、テメ…ッ」
赤面したヨクが眉をつりあげながら、多少怒り気味で言った。けれど、赤面と寝癖で怖さが台無し。
なんとなく、おかしくて吹き出すあたしにヨクは更に頭をクシャクシャに乱していた。
ヨ「…それでいいんだ」
リ「は?」
頭をクシャクシャにしたヨクが、あたしに優しく笑う。そんなヨクの見慣れない表情にあたしの胸が高鳴ったのも事実。けれど、照れくさくて…あたしは思わず俯く。