幸福論
「いえ、後ろでいいです。」

助手席に乗ることを勧めてみたが、断られた。

「ん?まあ、いいけど。」

運転席に乗り込む。
エンジンをかけて、車を発車させる。

「あれ、先生、煙草変えました?」

「あぁ、まあ。」

「へえ。」

俺たちの車内の会話は、これだけだった。
教師と生徒なんだ。それ以上でもそれ以下でもない。
特別話すことがないなら、会話する必要は無い。
それに、俺は、この沈黙が心地よかった。
何故かよくわからないけれど。
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