どこかで誰かが…
「ね、だから会うことなんかナイって言ったでしょ。これ飲んだら行こ。」

「大丈夫。なんてったって、大人ですから、俺。」

「はいはい。」


そして、佳菜子の言うとおり、
今あるグラスを空けると、三人は店を出た。


佳菜子の家まで、てくてく歩いて行くと、

「じゃあ、また。」

気を使ったのか、清瀬は先に姿を消した。


「少しは信頼してもらえたかな?…そしたら今度、クルマで遠出しよ。行きたいトコがあるんだ。」

「うん。」

「…じゃ。」

「今日はありがとう。」

「あいよ。」


片桐に見守られる中、後ろ手で扉を開け、手を振りながら、尻から中へと入ろうとするも…なかなか扉を閉められずにいると、

「いーから、早く入れって。」

微笑みながら言う片桐こそ、
鍵をかける音を確認した後も、しばらく堀口家を眺めていた。


すると、二階の部屋の明かりが灯り、勢い良く開いた窓から、再び姿を見せる佳菜子が、
手スリに身を乗り出し、さかんに手を振る様子を見て、
片桐は、電話をかけて応えるのだった。


「高校生に戻った気分だな。」

「なつかしい?」

「こんなこと、したことないけどさ。」

「…早く行かないと、バスなくなっちゃう。」

「だな。」


二人は、電話を持っていない方の手を、見えなくなるまで振り続けた。

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