どこかで誰かが…
「…じゃあ、ゆっこちゃんの好きな高木くんは、どんな人?」

「!」

「なんで言わなかったの?言えば良かったじゃん!好きだって!」

「だって高木は、佳菜子のこと」

「そーかな?!…何も言わずに居なくなったのに?」

「あ…」

「きっと(そーだよ。私、何も言われてないんだから。鈍感だって言うけど…)違かったんだよ。」

「…」

「…」

「…佳菜子…ごめん…」



しばらくして、二人が体育館に戻ると、何も無かったかのように、練習が始まっていた。


男子も少しずつやって来たが、
全員ではなく…

誰も高木のことを口にはしなかった。


それぞれ、色々とあるのだろう。


そして、高木の名前は、暗黙の了解で、禁句となった。


そんな中、時折、

高木がいた…高木といた時間を思い出しては、

もう、聞こえてこないあの声や、独りで乗り込む車両の空間に、ふと、寂しさを感じることがある佳菜子…


高木が降りる駅のホームを、車窓から見つめながら、決して振り返ることの無かった高木の背中を思い出していた。


(なんだ…最後まで、手を振ってくれなかったね…)

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