憂いの塔
第一章





「―――……。」



嗚呼、またこの夢か。



私は目を覚ました。


寝起きは視界が掠れる。




視界の隅に、黒い物体が写った。


目をやってみる。

霧生(キリュウ)だ。


日当たりの良い縁側で、庭に向かって茫然と座っている。


そして、いつもの黒いYシャツに黒いズボンという格好だ。




呑気なもんだ。


私は小さく溜息を吐いた。


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