パパはアイドル♪ ~奈桜クンの憂鬱~

「楽しそうじゃん」


いつの間にか部屋に碧が入って来ていた。


「あっ、お疲れ。終わった?」


聞きながら泉はもう立ち上がり、碧の為にコーヒーをいれようとしている。
いつも1番、気が利く。


「うん。もう少し早く終わるかと思ったけどね。意外と、かかったね」


『ありがとう』と泉からコーヒーを受けとり、すぐに口へと運ぶ。


「今回、セットが凝ってたよね。あの土星のオブジェ、欲しかったなぁ。狙ってるんだけどなぁ」


奏が携帯を取り出しながら言った。


「あぁ、オレ、それもらったよ。もう要らないって言ってたから」


サラっと言った碧の言葉に、奏の電話をかけようとしていた右手が止まった。


「マジで?ショック…。あれ、ほんと欲しかったのに。先に言っとけば良かったよ」


今回のツアーのコンセプトは『無限』
そこから宇宙を意味するものも用意されていた。


土星のオブジェはかなり精巧に出来ていて、大きさも直径30センチ程と手頃。
部屋のインテリアとして最高に見えた。


「言ったもん勝ち」


心がテーブルに広げたタロットカードをめくりながら淡々と言った。
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