嘘つき⑤【-sign-】
部長があたしの目元を捕らえてから、少しだけ悲しそうに目を細める。
そんな顔、しないで下さい。
やっぱり、嘘。と引き止めたくなる。
目元が熱くて、流れる涙で気を引こうなんて思ってないのに。
どうやったって体は正直だ。
「早、く、行かないとっ、引き留めますよっ…」
本当に、早く、
矛盾した言葉を吐くくらいあたしは動揺しているから。
声が震えないように気丈に振る舞うのが今は精一杯で、あたしは軽く息を吐いてすぐに飲み込む。
部長は、
もう本当に、
今まで見た事がない位
優しい瞳で、
「…ありがとう」
と笑った。