嘘つき⑤【-sign-】

部長があたしの目元を捕らえてから、少しだけ悲しそうに目を細める。


そんな顔、しないで下さい。


やっぱり、嘘。と引き止めたくなる。



目元が熱くて、流れる涙で気を引こうなんて思ってないのに。



どうやったって体は正直だ。



「早、く、行かないとっ、引き留めますよっ…」


本当に、早く、



矛盾した言葉を吐くくらいあたしは動揺しているから。




声が震えないように気丈に振る舞うのが今は精一杯で、あたしは軽く息を吐いてすぐに飲み込む。


部長は、



もう本当に、



今まで見た事がない位



優しい瞳で、




「…ありがとう」




と笑った。


< 135 / 152 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop