嘘つき⑤【-sign-】
テラスへ続く廊下を静かに歩く。
月の光で明るい夜空が、好きであたしはよく深夜抜け出してそこから空を眺めた。
なぜかしら。
いつもは父様がいる時は行かないのに。
父様の書斎の横を通らなければならないから。
最も、殆どこの広いだけの屋敷にいない父様が、珍しく家にいたとしてもこの書斎にいる事はないのだけれど。
私はなるべく足音を立てない様に、扉に一歩一歩近付く。
漏れる声に気付きもしないで。