嘘つき⑤【-sign-】
気が付けばあたしは自室に戻る事もなく、
使われていない母様の部屋の扉の前に立っていた。
この部屋は普段は鍵がかけられていて、その鍵は私が持っている。
無意識に向かった母様の部屋だけど、その鍵を持っていないネグリジェのままの自分の格好に少し笑った。
変ね。
こんな時に笑えるなんて。
ううん、おかしいのかもしれない。
何もかも。
汚い、汚い、汚い、
頭の中でそう連呼する声に頭がキリキリする。
いつか静かな笑みは自嘲した笑いに変わって、あたしは扉の前に力なく倒れ込んだ。
考える事を拒んだ意識を飛ばして。