嘘つき⑤【-sign-】
扉が開いて、その長身でグレイの上等なスーツを着こなした彼は、あたし達二人が立ち尽くす不穏な空気に臆する事なく入ってくる。
「私あなたのマンションにピアス忘れてなかったかしら?」
天童さんは赤い唇を艶やかに曲げた。
あたしは、――――一瞬体が強張って平静を装うのに必死だ。ピアス、なんて。古風過ぎる。だけど、それが外れるような、なにかがあったと匂わせているのは明らかで、
「…ああ。やはり君のか。」
部長は、天童さんに言葉を返す。綺麗過ぎる端正な顔からは何の感情も読み取れない―――――