世界を渡る四の天災
「…おい。」
「…あぁ…。」

 失礼、と鎧の胸部装甲も剥ぎ取って、今度こそ二人は顔を蒼白くさせた。

 胸は丸くふっくらと膨らんで、衣類の上からでもその形が確認出来る。そして悟る。コレは女の子だと。だがしかし、気を失った美少女を前にしても兵士二人は気をしっかりと保っている。そして二人は時間をかけてゆっくりと立ち上がり、後ろに控える兵士団長に顔を向けた。その鬼気迫る部下の迫力に気圧される士団長。



「団長殿…。」
「な、何だ…?」
「我々、後で首が飛ぶかも知れません…。」



 女に剣を取らせるな。アルスアインドの兵、騎士達の掲げる最も重要視される掟である。騎士団長にこの事が知られれば打ち首は必至であった。同じように顔を真っ青にさせた士団長と兵士達は至急、且つ丁重に彼女を城へと運ぶのだった…手に汗を握りながら。





 城内。
 戦闘後の復旧作業や怪我人の治療、王妃や王子、王女は目に涙を浮かべながらアルスアインド王と再会した。何故かシルフィーヌを連れて行った兵も声を上げて泣いている。何か思う事があったのだろう。



 救世主…ブラック・ハウンドの噂は城内の兵士と騎士、王族の者全員が知る事になった。ただ一つの事実だけは知らなかったが。

「ブラック・ハウンド…彼は一体何者なのか…話に聞くには一級魔術師すら遥かに凌駕する力の持ち主だとか…。」
「私(ワタクシ)は騎士団長すら目を見張る剣技の使い手と聞き及びました。…さぞ高名なお方なのでしょう。」
「父上、僕はその人に早く会いたいです!」
「パパ、黒い人ってカッコいいのかなぁ?」



 ブラック・ハウンドの素顔を知らない彼等…兵士、騎士達は全員絶句する事になるのだが、それはまた少し後の事である。
 
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