新アニオタ王子


だけど岡本はコンビニの袋より、100均に目がとまる。


「それなに?」


あたしは、よく聞いてくれたと言わんばかりに布団用の大きな洗濯ばさみを取り出して見せた。

「100円均に行って買って来た。」

「マユちゃんみたいな子でも100均なんて利用するんだね?

でも僕の家に布団を干せるような場所なんて無いよ?」


不思議そうに聞く岡本にあたしはただ優しい笑顔だけ返し話しを逸らす。


「一週間の体重の変化は?」


「それが…200グラムくらいしか減ってなくて…」



俯き話す岡本だけど…


それくらいあたしにの予想圏内だ。



「なら、走りなよ」

唐突に言った.あたしの言葉を理解できずにキョトンとした顔をする岡本。



「黙ってないで走れっ!」

もう一度、今度は言ったあたしの言葉を今度は理解したらしく

岡本の顔色が青ざめる。


「待ってよマユちゃん

僕、本当に睡眠不足で…」



またまた、やる気なし?

「あたしだって貴重な休みをあんたなんかに使ってあげてるんだから

言う通りにしてよね」


怒るあたしにぶつぶつ文句を言い始めるけど

そんなのはお構い無しに岡本を強制的に外に連れ出す。


この巨体で最初から一気に体を使えまい…。


「アパートのまわり10周して」

「えっ?」

「とりあえず10周でいいから」


「…10周って!

簡単に言わないでよ?」

たかだかアパートの周り10周にやたら、弱気な態度。

「運動しないあたしだってアパートのまわり1周するのに

きっと5分もかからないわよ?」

肩をすくませるあたしに「嫌だよ」とすかさず即答。


「つべこべ言わない!」

「なんで僕が?」

「痩せたくないの?

イケメンになりたくないの?」


もともと…痩せたトコロでイケメンになれるかは別の話しだけど。



お金も払わずにあたしと会えてるんだ。文句なんか言う資格無しっ‼



「よーいドンッ!」

あたしの掛け声で渋々走り出した岡本。

5分位で一周してくると思ったのに

10分もかかるわ、汗も気持ち悪いくらいかいてるわで…酷い状況だ。


「はぁ…はぁ…

もう…僕、だめ…だ。」

1周目でリタイア宣言?

早すぎだって。

そんなの笑えない。


「何言ってんの?まだ一周目だよ!」

「動けないよ」

座り込む岡本の丸い背中を見て、あたしは一人頷いた。

こんな事も予想圏内なんだ。

だからこそ買った洗濯ばさみ。を取り出して

じりじりと岡本に近づく。




「そ、それ…何に使うの?」

あたしの笑顔を見て身震いする岡本は声も震わせた。


「決まってんでしょ?フヌケなあんたに喝を入れるためのアイテムだよ?」

あたしの考えを読んだように

絶句して、慌ててまた走りはじめる。


「…あら、まだ動けるんじゃん。

残念だわ…」


そして今度は何も言わずに8周走り終えた所で、バタリとあたしのの前で倒れこむ。

< 48 / 100 >

この作品をシェア

pagetop