新アニオタ王子
「はぁ…はぁ…はぁ…」
息も絶え絶えで倒れこむ岡本の前で腕を組むと
「あと2周!」容赦無く言い放つ。
「もう…本当に無理…」
本当に動けなさそうな岡本にあたしは容赦なく、あの大きな洗濯ばさみで奴の分厚い腹の肉を…
バチーンッ!!
「痛ーーーーっ!!」
跳び上がる岡本。
「あと2周!」
冷たく言うあたしを涙ぐんだ目で睨みつけると
岡本は腹に洗濯ばさみをつけたまま2周走りきった。
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シャワーを浴びて
げっそりとした表情を露わにしながらあたしを部屋に入れた岡本は
拗ねたようにあたしに背を向けて
「鬼」と呟いた。
どうやら本気でふて腐れているらしいけど
そんなのあたしには関係無い。
「毎日走ってね」
「やだ。」
「イケメンに…」
「なりたくない」
あたしの
言葉を遮り
ベッドに横たわった岡本を…
黙って見つめる。
ダブルベッドも岡本にかかればシングルの大きさに見える…。
「こんなに大変な思いするなら、今のままで不満なんか無いんだ」
諦め切った言葉を呟いてくるからため息しか出てこない。
気がつくと岡本は「すー…すー」寝息をたてて寝てしまってる始末だ。
所詮、デブオタクはデブオタクのままか。
せっかくの休みを無駄にされた苛々がふつふつと込み合げてくるから
帰る前に
岡本にとって命同等なアニメのDVDを何枚か割って帰ろうかと思いマホりんっぽそうなDVDを探しはじめると、棚の奥に赤い表紙の小さなミニアルバムが
存在を消すようにひっそりと紛れていた。
何気なく開いたページに可愛いらしい女の子とけっこうイケメンな男とのツーショット写真。
女の子の肩を抱く男は
岡本と比較してはならないほどのイケメンだけど…
もしかしたら岡本は無謀な恋をしてたのかもしれない。
叶わない恋を諦めたか…。
そっとアルバムをしまい。
DVDも壊さないで棚に戻したのは
鬼の目にも涙ってやつかもしれない…。
腹もたつけど…
やっぱり同情。