新アニオタ王子
「僕だってマユちゃんの客だかし…ね?」
気まずそうに笑っていたけど
岡本の口から
「客」
という言葉が出た時
胸の奥に何かが刺さるような切ない痛みが走った。
「…マユちゃん?」
「バカ!!」
「えっ?なんで?」
なんで?なんて
自分でも分からないけど
あたしはバッグを岡本に投げ付けて部屋を飛び出した。
あたしはどんな言葉を期待なんかしてたんだろう…
こんな高いヒールじゃ
走る事なんて出来なくて
慌てて追い掛けて来た岡本に腕を掴まれた。
「…何よ?
なんで追い掛けてくんのよ?」
困惑する岡本を睨みつけると戸惑ったようにあたしのバッグを差し出す。
「だって、バッグにお財布とか入ってるんじゃないの?」
「えっ?」
差し出されたバッグを見て
急に恥ずかしさが込み上げてくる。
奪い取るようにその手からバッグを取りあげると
二人の間に重たい沈黙が訪れた。
「なんでマユちゃん怒ってるの?」
「そんなのあたしにも…わかんない。
ただ、あんたといるとドキドキしたり
緊張したり、自分でも予測不能な行動とったり
…
あたしん中めちゃめちゃだよ」
岡本が小さいため息をついて
あたしの手をそっと握った。
「マユちゃん、その気持ちが何なのか分からないの?」
「分かるわけないじゃん」
「僕には分かるよ。だけどね…」
だけど…
何?
顔を見上げたあたしを、いつに無く真剣に見つめる。
「それはマユちゃんが自分で気付かなきゃいけない事だって思うんだ。」
「何それ…?」
返事の代わりに困ったように微笑んだ
岡本の顔があたしの心を温かくしていく。