新アニオタ王子


「マユちゃん!?」

駐車場の方から声と共に駆け寄る岡本。

「マユちゃんどうしたの?」

「…遅いわよ!」

「えっ?僕仕事だったし…

それにマユちゃんだって今日、来る日じゃないよね?」

あたふたする岡本を勢いで睨みつける。

「うるさい!あたしはあんたに言いたい事があって…」

「言いたい事?…電話じゃ無理だったの?」



電話?

そういえば

それでも良かったかもしんない…


でも、やけに冷静な事を言うそね態度が腹立つ。

「文句なんか…

電話で言ってもスッキリ…しないじゃん」

「そう?で、文句って何?」



「忘れた」

「えっ?」

あんなにたくさんあった文句なんかあんた待ってる間に忘れちゃったよ…



突然

香月さんの言葉を思い出して

なんでだろう…

また

ドキドキが止まらない。



…これが好きって気持ちなの?

冷蔵庫から飲み物を取り出す岡本の横顔を盗み見る。


そんなわけ…ないよね。

だって

デブではなくなってきてるけどアニメオタクだし

キモい事は変わらないし。

ましてやあたしの初恋がこんな奴なわけない!!

絶対にそんな事許されるわけがない。


だけど岡本が隣に座るだけで

あたし…

緊張してる。



「マユちゃん?具合いでも悪いの?」

「えっ?」

「いつもキツイ事ばっかり言ってるのに

今日はなんだかしおらしいし…

仕事で嫌な事でもあった?」

嫌な事……

そう言われて一瞬

斉さんと昨夜、体を重ねた事を思い出した。



「ねぇ…」

「ん?」

「…あたしの仕事のことどう…思う?」

「仕事?!なんで?」

「いいから」

「…う〜んそうだなぁ…

マユちゃんには合ってるんじゃない?」

「どうして?」

「そりゃあNo.1って言われるくらいだし?」

「誰かに一日買われる
仕事でもあたしに合ってる?」

自分でも

なんでそんな事聞いてるのか分からないけど

岡本も不思議そうにあたしを見つめた。


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