新アニオタ王子
「マユちゃん、…久しぶり
僕の事覚えててくれてる?」
「な…んで
あんたがここにいるの…?」
「オタクって名前の犬を見たくて」
「えっ?」
「康史さんに頼んだのは僕なんだ。」
「なんで…?」
「それはまだ言えないけど」
俯く彼を目の前にして頭の中が真っ白になる。
意味がわかんない…
何が起きてるのか理解できない。
「仕事…何時に終わるの?」
「えっ?」
「お金払うから
仕事終わった後の時間少しでもいいから僕にくれないか?」
…お金なんているわけないじゃん。
「あたし、もう恋人クラブのマユじゃないから
お金は…いらない。」
「じゃあ後で迎えに来るから」
そんな言葉と優しい笑顔を残してあいつはいなくなった。
幻じゃ…
ないんだよね?
わけのわかんないままあたしは仕事も全然手につかないでシャッターの降りた店の前であいつが来るのを待っていた。
仕事終わる時間も教えてないのにあいつはホントにあたしを迎えに来るんだろうか?
そんな事を考えながらも
ただ
人通りの多い通りをぼんやり眺めていた。
「マユちゃん」
店の裏の方から声がして恐る恐る振り返ると彼がこっちに向かって歩いて来る。
その姿を見て苦しいくらい
高鳴る胸の意味は分かるのに…
どうしてあたしこんなに泣きそうなんだろう。
込み上げてくる想いを必死に飲み込んで
あたしは何も声にする事はできなかった。