幕末〓冷血の鬼
どこか儚げに梅を見つめる男の人を私は遠くから見つめた。


「おや?君は?」


私の姿に気づくと男の人はゆっくりと私に歩み寄ってきた。


「あなたは?」


「俺は、芹沢 鴨。ここは壬生狼組の屯所だぞ。何故、君のような少女が此処にいるんだ?」

「それは…「芹沢、そいつから離れろ。」」


不意に後ろから声がして振り返ると何時にも増して眉間にシワを寄せている土方さんがいた。

「土方、この娘は何故此処に居る?」


「俺の小姓だ。」


「お前の?娘、名前は?」


「恋花です。」


「恋花か。お梅程の色気はないが、土方の側に置いておくのは勿体ない気もするな。恋花、気が向いたら俺の所に遊びにおいで。」


芹沢さんは、そう言うと歩いて言ってしまった。
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