ありのままのあなたでいい

2年ぶりに立った台所

仕事ができるようになった・・・
食べられるようになった・・・
しかし、家事はまだできませんでした。


もう2年近く台所には立っていません。
掃除もしていません。
少々汚い部屋でも、
人間は生きていけるものです(笑)




そんな私が、
再び台所に立つきっかけになったのは、
息子の高校入学でした。


もちろん、高校には食堂もあったし、
コンビニ弁当で
ここ2年ほど過ごしてきたのですから、
それでも良かったのですが、
今年、教師になりたての
熱血先生に担任していただくことになり、
その先生のひとことで
「お弁当を作ってみよう」と思ったのです。



それは、

「高校生になると、
男の子は家族にあまり話をしなくなります。
僕もそうでした。
でも、母親がいつも聞いてくれました。

『お弁当のおかず何する?』と。

ぶっきらぼうに『何でもええ』と答えてましたが、
『今日のは、うまかった』とか
『もう一品おかずが欲しい』とか。

お弁当って、母親との話題になるんですよ。 
お金を出せば、何でも食べられますが、
親子の会話は買えません。

どうかお母さん方、
面倒がらずにお弁当を作ってやってください。」




買い物に行っても、
何を買っていいのか、
考えることができなくなっていましたから、
お弁当を作るというのは至難の業だったのです。



でも、やる気になればできるもんです。 
2年ぶりに作ったお弁当を、全部食べてきて
「今日のうまかったで」と息子が言った時には、
涙が出るほど嬉しかったです。


うつ病の回復過程は、ひとことで言うと、
できていたことを思い出し、
できた自分を認めるということを
くり返すことだと思います。

うつ病になった方は、喪失体験をお持ちです。
病気になったことで、
仕事ができなくなった、
家事ができなくなった、
友達や家族の信用を失った・・・
そして、何より一番大きな喪失は
「自信」をなくすこと
つまり、「自分が信じられなくなること」なのです。
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