君のそばに
みんなが嘉賀くんに注目する。
嘉賀くんファンはというと興奮が最大まで高まって、どうしようもないくらい騒ぎまくっていた。
でも、私にはそれを気にする余裕がなかった。
私はかなり緊張していて、心臓の音だけしか聞こえて来なかった。
嘉賀くんは、何かを期待するような眼差しを向けるファンには目もくれず、
真っすぐに私の元にやって来た。
私の心臓がドキンッと跳びはねた。
「…伍棟、…悪いけど一緒に来て。」
嘉賀くんはそう言うなり私の腕を掴んでグラウンドに足を進めた。
「…ち、…ちょっと……!」
私は軽く抵抗するように掴まれた手を引きはがそうとしたが、びくともしない。
…そんな私の事なんかお構いなしに、嘉賀くんは私を引っ張るように連れていく。
後ろからはファンの嫌悪の叫びが聞こえた。
いや、グラウンド全体が私たちに注目している。
な、何でこんなことになってるわけ…!?
何で私が借り出されてるの…!?
私は嘉賀くんに連れられるがままグラウンドに足を踏み入れた。
いつの間にか体育祭の盛り上がりは消失して、私たちを見守る沈黙だけが残っていた。
みんなが私たちを見つめる。
一体、紙には何て書いてあったの…?
私は何故自分がこの場にいるのかが分からなかった。
いや、本当は分かっていた…。
でもその事実を受け入れたくなかったのかもしれない…。
私の頭にはさっきの3年の女生徒が言っていた事が、ひたすら回っていた。
”あなたの好きな人”
そんなわけないよね……。
きっと……。