君のそばに

嘉賀くんが部屋を出て行ったあとは、全然集中出来なくて、課題は全く進まなかった。
というか、課題をやる気にはなれなかった。


何であの時嘉賀くんを引き止めたんだろう。

何であんなことを言ったんだろう。


自分の中ではもう答えは出ていたはずなのに…。




そしてあっという間に夜はやって来た。

夕食の席には清水さんの姿があった。嘉賀くんの隣に座って、たまに咳をしながら食べている。

このあと私が嘉賀くんと会うことは清水さんは予想もしないだろうな…。


実のところまだ気持ちは、はっきりしていなかった。

あの時はただ無意識のうちに嘉賀くんを引き止めていて…。


とりあえず後で嘉賀くんと会って、今の私の気持ちを伝えなきゃな。

気持ちの整理がついてないっていっても、内容的には嘉賀くんが喜ぶはずもなく、私の体は気持ちと同調するかのように重たく、食欲を失わせた。


「どうしたんだよ?全然食ってないじゃん。」と、実春が隣から覗きこんできた。

「ちょっと、食欲がなくて…。」

「何?ダイエット??」

「違うって!
何か…食べたくないの。」


「何だよ。悩み事か?」

「うん、…まァ、そんなとこ。」

別に悩み事ってわけではないんだけど…。


ん…?

でも、こんなに考えても整理出来てないから、悩み事になるのかな…。


すると実春は私の食べ残した食事を横からひょいひょいとつまむなり自分の口へと運んだ。

私が制御する間もなく(もとより、制御するつもりはないけど)、私の目の前の皿は綺麗に片付いた。


そして、実春は一息つくなり私の腕を掴んだ。

「じゃあ、その悩みとやらを聞いてやるよ。」


そう言って腕を掴んだまま立ち上がり、歩き出すもんだから、私は意志とは関係なく立ち上がざるを得なかった。

「ちょっと、実春…!」

「どこがいいかな〜、テラスにでも行こうか〜。」


腕を外させようと焦る私を実春は完全に無視して、何やら柚に耳打ちするなり歩くペースを速めた。
多分、「沙矢の悩みを聞いてくるから」みたいなことでも言ったんだろう。


…完全に実春のペースに飲み込まれながら、私たちは部屋をあとにした。

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