君のそばに
2階にある海を一望できるテラスへと連行された私は、着くなり実春の手を引きはがしにかかった。
「ちょっといきなり何!?」
「だーかーら、悩みを聞いてやるって言っただろ?」
そう言って、実春はすんなりと私の腕を解放し、傍にあったベンチに腰掛けた。
聞いてやる、…って…。
私、実春に悩みを聞いて欲しいなんて一言も言ってないんだけど…。
…ホント、柚もそうだけど、実春も私のことなんてお構いなしだよね。
私が掴まれていたところを摩りながら、ちょっとした反抗心から立ち尽くしていると、
「ほら!突っ立ってないで、ここ座れよ。」
実春は私の方を見ながら、自分の隣の開いているスペースをポンポンと叩いた。
…はぁ…。
そこに座れってこと…?
別に悩みってことでも、ないんだけどな……。
第一、嘉賀くんのことをその弟に話すのは少し抵抗あるんだけど…。それに内容が内容なだけに、どこから話したらいいのかな。
私が実春の方をチラッと横目で見てみると、
実春は左足に右足をかけた姿勢で、月に照らされキラキラと光る海を見つめていた。
この様子から、もう聞く姿勢に入ってんだろうな…。
私がいくら抵抗したところで、実春はきっと私の悩みを聞くまで退かないだろう。
ということは、今私がしていることは無駄な抵抗ってこと?
こうやっててもただ時間が過ぎるだけ…。
私はハァ、とため息をついて指示された場所に腰を下ろした。