君のそばに


「……えっと…、…その、さっきも言ったけど……。」

「千春のことか…?」

私が最後まで言い切る前に実春が言った。

その顔は無に近い表情というか、…何だか怒ってるみたいで…。
…さっきから嘉賀くんの話になる度に、実春の様子が少しおかしくなる…。



「…他には何かある?」

実春はそんな困惑した私の気持ちなんか知るはずもなく、更に話を進めた。

「…他には…、う〜ん…。
…私って馬鹿じゃん?だから課題が夏休み中に終わるのかな、とか…、…進級出来るのか…とか。」

「…課題はさっき千春に教えてもらってたじゃん。」


…何でそこでまた嘉賀くんの名前を出すの?

ほら、また不機嫌になってる…。
訳は知らないけど、嫌ならわざわざ話の中に嘉賀くんを出さなきゃいいのに…。


「ま、あいつに課題教えて貰ったんなら大丈夫だよ。…何せ、学年1位の座をキープしてるからな…。
今から進級のことを気にしたってな〜…悩むの早くない??」

と、今度は実春は表情を優しく緩めて、いつもの様子で言った。
…若干、嘉賀くんが学年1位の座をキープしてるってところに刺々しさを感じたけど…。


実春の態度がコロコロ変わるからそれに合わせて私の気持ちも、緩んでは緊張して、緊張しては緩むのを繰り返す。


内心、まだ緊張しているけど、いつもの実春の姿に安心して私は話を続けた。

「わ、私の場合は気にしないとヤバイの!2学期はだらけないで頑張らなきゃいけないんだけど……それを考えるだけで軽く鬱になる…。」

ハァ〜、とため息を洩らすと私の頭に実春の手が乗せられる。


「心配すんな!オレが支えてやるし!」

と、いつもの如く私の頭をガシガシと撫でた。


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