君のそばに

「他にはある?」

そう言って私の頭から手を下ろして実春は言った。


「他に…、って実春は何がしたいの?

さっきから思ってたんだけど、私、実春の悩みを聞くって言ったのに、結局私の悩み話をして……。」

「いいから、いいから!

あれは?清水は?沙矢、結構悩んでたじゃん。」

私の話を遮って実春は自分の話を通そうとした。上手く交わしたとか思ってるのだろうか…。


「沙矢が話したらオレもちゃんと話すから。」

「……それなら話すけど、またはぐらかさないでよね!」


「分かってるって!」


全く…。
実春は本当に何がしたいんだろう…?

とりあえず私の話が終われば実春も話してくれるって言ってたから、まぁ、それを信じるしかないか…。


私は、そう思い軽くため息をついた。



「…う〜ん…、…今の私の気持ちを言うと…
…清水さんとは、…どう接していけばいいのか、…正直言って、分からなくなってる…。」

「…うん。」


実春は足元の1点を見つめたまま呟くように頷いた。
しかし、意識は私の話す内容にしっかりと向いているようだった。


「…だって清水さんは結局、嘉賀くんのことしか見てないし…。…私と仲良くなりたいって言ったのは、口実だったのかな、って思う…。」

「…そうだな…。」


別荘に来てから私、全然清水さんと喋ってない。
それは清水さんが嘉賀くんの傍を片時も離れないから。

唯一、離れてた時は今日の昼間。
清水さんが風邪をひいて自室で休んでた、と嘉賀くんが言ってたっけ。

夕食の時にはいたみたいだけど…。


別に嘉賀くんの傍にいるから話せないというわけじゃない。話そうと思えば、多分、話すことは出来ると思う。

けど、清水さんと話すために私が嘉賀くんの所に行けば、清水さんは露骨に態度を変えるわけで……。



一体、どうしたらいいんだろう…。


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