君のそばに
何で、実春が嘉賀くんの名前を出す度に表情を曇らせるのか…
このあと、実春が何を言おうとしているのか…
今、やっと分かった…。
何で、今まで私は気付かなかったんだろう…。こんなに近くにいたのに…。
「…沙矢、オレが何を言いたいか、分かる…?」
そう言いながら、実春は腕の力を強めた。
「……うん……。」
分かるよ…。
実春の体温、心臓の音、腕の力…
全てに私に対する気持ちが表れてる…。
「…オレは、沙矢が好きだよ…。
…千春が好きになる前から、ずっと、沙矢だけを見ていた…。
千春だけじゃなく、オレのことも考えて欲しい…。
オレを見て欲しい…。
いつも傍にいたけど、何も出来なくて辛かった。
あいつに渡したくない。
…沙矢、オレだけを見て…。」
そしてより一層、強く抱きしめられた。
(……コホコホ…)
すると、どこかで何かが聞こえた。