君のそばに
何だろう……?
実春に抱きしめられた状態で、不謹慎ながらも私はその音が気になって仕方なかった。
(…コホ……コホ…)
あ、また…。
何か、小さいけど掠れたような感じな音…。
「…沙矢はさ、…オレのこと、どう思ってる…?」
その音が聞こえないのか、実春は呟くように言った。
私はというと、その音の方に集中していたから、いきなりの質問にワンテンポ遅れて口を開いた。
「…どう、って……。」
「ずっと中等部の頃から一緒だったじゃん。…何も思ってないってことはないだろ…?」
実春は少し声を荒げて言った。
…私は……、
実春のことを…どう思っていた……?
…実春はいつも、私の傍にいてくれて、
楽しい時は一緒に騒いでくれて
悲しい時は頭を撫でて、慰めてくれた。
時には情けない私を叱ってくれたりもした…。
私は本当に実春に感謝してる。
いつも私の傍にいてくれて、私も心強かった。
けど、
…実春と同じような気持ちに、
なったことはあったのかな……。
「…私は……。」
私がそう口を開いた瞬間、
私を抱きしめていた力が緩んだ。
そのことに開放感と疑念を感じていると、いきなり実春の手が伸びてきて私の顎を掴んだ。
そして驚く暇を与えられぬまま、
実春の唇が重なった−…。