君のそばに


何だろう……?


実春に抱きしめられた状態で、不謹慎ながらも私はその音が気になって仕方なかった。







(…コホ……コホ…)


あ、また…。

何か、小さいけど掠れたような感じな音…。




「…沙矢はさ、…オレのこと、どう思ってる…?」

その音が聞こえないのか、実春は呟くように言った。


私はというと、その音の方に集中していたから、いきなりの質問にワンテンポ遅れて口を開いた。



「…どう、って……。」

「ずっと中等部の頃から一緒だったじゃん。…何も思ってないってことはないだろ…?」


実春は少し声を荒げて言った。





…私は……、


実春のことを…どう思っていた……?






…実春はいつも、私の傍にいてくれて、


楽しい時は一緒に騒いでくれて

悲しい時は頭を撫でて、慰めてくれた。



時には情けない私を叱ってくれたりもした…。




私は本当に実春に感謝してる。

いつも私の傍にいてくれて、私も心強かった。







けど、




…実春と同じような気持ちに、


なったことはあったのかな……。




「…私は……。」




私がそう口を開いた瞬間、

私を抱きしめていた力が緩んだ。




そのことに開放感と疑念を感じていると、いきなり実春の手が伸びてきて私の顎を掴んだ。






そして驚く暇を与えられぬまま、










実春の唇が重なった−…。








< 147 / 185 >

この作品をシェア

pagetop