君のそばに
清水さんが黒板に書き出した種目にワラワラと生徒が群がる。
やはり、1番人気は玉入れと短距離走みたいだ。
玉入れっていうと、ガキっぽくて高校生にもなってやる種目じゃない
…と、去年までは思ってた。
でも去年、種目が玉入れになって、いざやってみると、コレがハマるんだわっ!
我を忘れて白熱してた私に、クラスの女子どん引きしてたっけ……。
………。
「ちょいと、沙矢ってば!」
柚が私の耳元で声を上げ、思わず私はビクッとした。
私はまた自分の世界へ旅立っていたようだ。
元の世界へ帰化した私は何事かと柚を見上げる。
「大丈夫?かなり自分の世界に入ってたけど…」
「あ、うん。平気。
それよりもどうしたの?」
柚は真顔で右の人差し指を黒板に向けた。
ん…?何だ?
それにつられて前を見ると、黒板に書かれている種目のほとんどが埋まっていて、残るは騎馬戦とパン食い競走だけだった。
げっ!
微妙なのが残ったな。
私の顔がひきつる。
「あんたがボーッとしてるから、あれしか残ってないよ!」
私は深いため息をついた。
騎馬戦には嫌な思い出があった。
小学生の時の運動会で騎馬戦をやることになった。
上に乗る側になった私は、相手の八巻きを取ろうと必死になって後ろから来た敵に倒され、騎馬から落ちた経験があった。
頭を打ったがタンコブが出来る程度で、大事には至らなかった。
けど、それ以来トラウマになって騎馬戦が怖くて仕方なかった。
パン食い競走もな〜…。別にパン食べたくないし。
パン食い競走の何が嫌かって?
だって人前で糸に繋がれたパンに噛り付くんだよ!?しかもジャンプして!恥ずかしすぎるっ。
それにあれって中々噛り付けないし、モタモタして変に目立つし…。
リレーとかで1着でゴールするような目立ち方はいいけどさ。
こうなるんだったら、さっさと書いちゃうべきだったな…