君のそばに
「で、沙矢どうすんの?」
私の苦い思い出を知らない柚は私が悩んでる事も、もちろん知らない。
チョーク片手に私の決断を待っている。
どうしよう…。
皆の視線が私に集まる。
柚の一定のリズムで鳴らされる、中ばきの音が気になる。
ギャー!プレッシャーがかかる!
柚が『こんなんで、悩んでんじゃねーよ』オーラを出している
…気がする…。
こんなの地獄の選択だよ!
…いや、地獄とまではいかないか…
でも、地獄では無いにしろ、天国ではないわけだし…。
私は苦汁の選択を迫られる。
すると、
「じゃあ、伍棟さん。私と一緒に騎馬戦やろう?騎馬戦なら一人じゃないし、それに私、伍棟さんと仲良くなりたいもの。」
私の目の前に天使が舞い降りた。
清水さんはニコッと私に笑いかけ、サラサラと黒板に私の名前を書き入れた。
そしてもう一度笑う。
その笑みには癒されるわ〜。
それに、清水さんも私と仲良くなりたいって!?本当に?
何だか、心臓がムズムズしてくる…。
実春にはやめた方がいい、って言われたけど、もう関係ないね!
根拠も言えない人の言う事なんか信じられない。
自分の事は自分で決めるもん。
それでも騎馬戦はやっぱり……怖い。
でも、清水さんもいてくれるし、多分大丈夫だよね?
それに上に乗るとは限らないしね。
よし、決めた!
騎馬戦にまだ怖れを抱いていたが私は決心した。
私は清水さんの方に向き直って笑顔でこう言った。
「こちらこそ!頑張ろうね!」
実春が顔を歪めるのが見えた。
でも、大丈夫。
きっと上手くいく。